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2015年5月15日 (金)

『ウェスノスの兵士』 (Soldier of Wesnoth) の紹介

Wesnothのアドオンキャンペーンである『ウェスノスの兵士』 (Soldier of Wesnoth) の紹介です。

いろいろなキャンペーンの設定を拾ってうまくまとめた、よくできたストーリーのキャンペーンです。Wesnothが好きな人にとくにおすすめです。

これはコンラッドⅡ世亡きあとの第2次内戦期の農民出身の英雄の話です。夢見がち、かつ大胆で、馬鹿がつくほど率直なアドラリンは、土地の男爵を救ったことに乗じて、以前から恋していた男爵の娘に求婚します。彼が結婚相手としてふさわしくなるべくウェスノス軍に加わろうとするところから話は始まります。さてそれが……あとはやってのお楽しみです。これはネタバレなくやったほうがよいでしょう。先のシナリオ名も見ないほうがいいですよ。

話はとにかくいろいろ盛りこまれていまして、ウェスノスの兵士の話としても読めますし、ウェスノスの恋人たち、ウェスノスの結婚事情、ウェスノスの貴族の腐敗とか、さらにまだまだあります。

さて、ストーリーの個々の要素はありがちと言えるものもあるのですが、大量の要素を詰めこんであるうえに全体としてまとめて見ると驚くほどきれいに破綻なくまとまっています。さらに、31シナリオもありながらダレたところがほとんどありません。逆に急ぎすぎという感じがするくらい中身が濃いです。作者の力量は疑うべくもありません。

強いて言えば、一部取ってつけた感のある話が盛りこまれているのと、「急ぎすぎ」とも関連するのですが、強引な展開も見られます。ただしごく一部を除いて納得できる展開なので、気にする必要はないでしょう。いつか起きることがストーリーを加速するために今起きたという感じです。

メッセージの翻訳を置いておきます。ライセンスはGPLv3またはそれ以降です。

ダウンロード wesnoth-Soldier_of_Wesnoth-3.0.1-ja-8.zip

ネタバレは見ないほうがよいと書きましたが、感想とか書きたくなるような話なので書いておきます。カラオケみたいなものです。ただし、『新しい秩序』や公式キャンペーンのネタバレも気にしていません。いつもはネタバレでもなるべく配慮していましたが、今回は少々ハードルを下げています。ご注意を。

では感想をつづきで(攻略法は書いてありません)。

シナリオごとに感想を書いていきます。ほんと、いろいろ書きたくなるストーリーです。未プレイの人は見ないでね。

シナリオ1 お嬢さまの苦難
  • しょっぱなからあんないい加減なことを言うアドラリンが、じつはウェスノスを愛する男でした。
シナリオ3 路上の乱闘
  • このあたりで、実際的なエリニヴァーと馬鹿正直なアドラリンの違いがはっきり示されています。
シナリオ4 王国の魂
  • アドラリンの人柄がよいほうへ転ぶ。基本的に、ばかさかげんにあきれるか、包容力の大きい者はアドラリンを受けいれます(あきれるのを受けいれると言えれば)。飲み屋の人みたいにそのどちらでもないと敵になってしまいます。生きていられるのはプレイヤーのおかげだな。
  • あとでまた書きますが、アドラリンが出発した時点で末の妹はまだ初潮が来ていません。
シナリオ7 森の中の影
  • 実際的だったエリニヴァーは、じつはアドラリンのやりかたもうまくいくんじゃないかと思いはじめてしまいます。プレイヤーのおかげだって。あんだけけんかを売りまくったらふつうは死んでます。
シナリオ8 はぐれ魔術師
  • 農民出身の英雄の話といっても、実際には貴族とからまないとなにもおきないのでした。そういえばシナリオ1もそうだ。
シナリオ10 離れ行く道
  • いろいろなウェスノスの愛の道。
  • ウィレムがエリニヴァーに無理強いしたことを怒るアドラリンですが……。自分の部下のためにエリニヴァーの望みをあきらめたのはウィレムもエリニヴァーもいっしょです。貴族の義務ってやつですかね。まあ他人の望みなら簡単にあきらめられますが。
  • 基本的にエリニヴァーという人物は自分のことが優先です。貴族の義務みたいなものは眼中にありません。それでも部下の命は無視できませんでした。
シナリオ11 ウェスノスの兵士
  • 即日ってのが強引な展開ですよね。でもこれは納得感があります。アドラリンは強くなってるしね。
  • リリンのおかげでアドラリンのばかっぽさが目立たなくなります。この人はそのために配置されています。
シナリオ13 遵法と暗黒
  • アドラリンは数ヵ月行方不明だったはずなので、そのことに気がついてもいなかったエリウェンのこの言いようはちょっと盛ってないか?
  • しかもあんなにもノリの軽い男が移り気だとは気がついていてしかるべき。それはエリニヴァーも気がつくべきだ!
  • まあ、エリウェンもかつてのアドラリンと同じくらい世間知らずってことでしょうね。しかし怒りながらも農民に対して差別的な言葉を適切な言葉に言い直すあたり、その限界の範囲内で優しくていい人みたい。
  • 恋をしている割にアドラリンのエリニヴァー評はすごい冷静。驚き。夢見がちな男ではなかったのか。
シナリオ16 古代の亡霊
  • ドラゴン戦争話はどういう意味があるのかと思っていたら… (また後で)
シナリオ17 エーサンの森の野獣
  • ゲームなんだからターンは守ろうよ。ほんとに。そりゃアドラリンも怒るよ。
  • 冗談はともかく、一応ゲームなのでプレイヤーの操作を無視したイベントには高度の納得性が必要だと思うのです。彼の場合はいわゆる○○○○○が△っていたのでまあいいですけどね。下手な手法だと○○○○○と揶揄されますが、ああいうプレイヤー(読者)の心理的負担が大きい描写は、それを軽くする手法ってのが必要なんですよ。そうしないと読者が覚めるのです。
  • 味方エルフが敵に倒されると勝ってしまうバグがあります(メッセージが中途半端になります)。山にこもると馬が来られないからいいと思ってたらエルフを救えませんでした。
シナリオ18 忠誠への報い
  • シナリオ13で過去を切り離したアドラリンの選択はお墨付きを得たかのようになりました。
シナリオ19 別のお嬢さまの苦難
  • モーランに辞めんなと言われてたのに、むちゃくちゃあっさりいくね。彼は本当に移り気です。簡単にした判断は簡単に引っくり返りそうです。
  • カーラスの伯爵もフォルカー男爵も義務を果たしていたのにね。
  • もしかしてエリウェンに対する罪悪感の裏返しだろうか。
  • アドラリンの末の妹は数ヵ月で胸がでかくなっていました。
シナリオ20 さらば、ウェスノス
  • アドラリンのいちばん上の妹は、小さいころはアドラリンの世話をしていたそうです。もしかして姉だろうか? そうするとアドラリンが最初に出発したときには無視されていました(父とyounger sistersに別れのあいさつをする)。それだと寂しいので翻訳では妹としています。
シナリオ21 ようこそ、北の土地へ
  • 北部シリーズは楽しいひとときです。
  • 楽しく、身近な人との関りあいのひとときを描いたのは、あとの話と対照的にするためでしょう。
シナリオ22 ドワーフの扉の都市
  • このへんから軍隊を抜けた理由をモーラン謀殺ということにしています。うそだよ。あとでわかりますが、ちょっとしたうそはいいんだという境地になっていたのです。
シナリオ23 過ぎ去りし日々の伝説
  • ドラゴン戦争話がまた。これは唯一取ってつけた感のある、まとまりを欠いた話題だと思います。でも『炎の歌』を先にやった人は違う感じなのかな。
シナリオ24 闇への没入
  • それやったらおれ死んじゃうじゃんと言う英雄。心が明晰になるという裁きの杖の効果が現れています。
シナリオ25 旧友の復帰
  • 自分のことを第一に考えるエリニヴァーとみんなのためを考えるアドラリンの衝突。エリニヴァーはだからこそアドラリンを愛したのですが、やはり不安定なのでした。不幸になるのは決まっていました。
  • そろそろもう一度書いときますが、シナリオ1の段階で末の妹(メリナ)はまだ初潮が来ていませんでした。リリン君にはやはり裁きの杖を使うべきだったのでは?
  • この子どもは名前だけ“Aria of the Dragon-Slayer”に出てきます。
シナリオ26 同盟の力
  • アドラリンは結構怒りっぽくなっています。そのため以前ならアドラリンにできたかもしれないまとめ役のために、シンベルという人物が必要になりました。
  • しかしカリファは『新しい秩序』をやってるとやられ役としか思えない……
シナリオ27 交差する運命
  • アドラリンのウェスノスへの愛を語るところは、エリニヴァー的生き方への決別です。
  • みんなのために行動する英雄が身近な人(エリニヴァー)へ冷淡なのは必然なのだろうか。そいうやエリウェンも捨てたよな。『新しい秩序』のガウェンは、身近な人を守るのに失敗して初めてみんなのために生きることが腑に落ちた(1度目)。あるいは強いられた(2度目)。アドラリンはガウェンの手に届かなったものを手に入れたが軽く扱っている。様々ですな。
  • しかしアドラリンはけんかを売るよなあ。ウェスノスよりけんかのほうが重要か? 裁きの杖の効果は切れたようだ。真面目な話、権力が腐敗する過程を見せられているのだろうか?
シナリオ28 母国
  • エルフレッドとその部下の対称となるようにカリファの高潔さが演出されています。ちょっとあからさますぎ。
  • このシナリオと次のシナリオでは、今までの集大成のような感動的な演出があります。
シナリオ29 獅子と竜
  • カリファとの(また、ゴールド的に)最期の戦いなのですが、あとのストーリーと対称となるよう感動的な演出があるので、ゲームバランスのほうは重視されていない気もします。
シナリオ30 手を切り落とす手
  • さて、唯一納得感のない強引な展開です。覚めてしまいます。作者がこうしたいのはよく伝わってきます(というか、しまいます)し、そうしないと不幸な結婚生活が予想できますが。
  • 読者が感情移入するキャラクターをいろいろするときには細心の注意をして処理しないと……
  • アドラリンがこうすることを敵は知らなかった、あるいは確信を持っていないはずですが、そうすると確信を持って行動しています。現実にはこのようなばかなトップも存在するのでしょうが、フィクションはリアルでは不足で、リアリティが必要です。事実は小説より奇なりってやつ。
  • あと、ターン無視するな。
  • すくなくともキャンペーン中は幸福に終わったけどその後が… というWesnoth流エンディングもいいものに思えてくる。
シナリオ31 正義の名において
  • でも最後の語りは感動だよ。シナリオ29で終えずに強引に展開させたのはこれをやりたかったせいだろうね。
  • でも『新しい秩序』の最後ほどではないな。まあ比較するようなことじゃないのでどっちが好きかってことだけど。

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